あの人に聞け(李儒編)
司会「今回のゲストは、李儒さんです。よろしくおねがいします
李儒「こちらこそ」
司会「李儒さんって、平成の初期では、三国志演義(以下演義)の創作人物って言われていましたが、実在するのですね」
李儒「失礼ですね。私は実在の人物です。後漢王朝で郎中令まで出世したのですよ」
司会「郎中令とは?」
李儒「王の大夫で、郎中の宿衛を司っていました」
司会「郎中とは?」
李儒「王の守衛、王が巡幸するときは車騎に同乗する者です」
司会「大夫とは、?」
李儒「王の顧問や。応対を掌っておりました」
司会「どの王に仕えていたのですか?」
李儒「...弘農王」
司会「弘農王?。あ、皇子辯ですか」
李儒「...そうです」
司会「皇子辯、少帝の事ですね」
李儒「あああ、そうなりますね」
司会「で、演義とは違って、どのような活躍されたのですか?」
李儒「(何故か口ごもる)」
司会「黙ってないで教えて下さいよ」
李儒「王に良薬を勧めたのです。董太師に命じられて」
司会「薬ですか。なにか演義と一緒ですね。そのシーン」
李儒「......仕方がなかったのです。ああするより」
回想
- 董卓「李儒よ。この薬を弘農王に飲ませよ」
- 李儒「董太師。この薬はなんでしょうか」
- 董卓「良薬よ。あらゆる病から守ってくれるものだ。飲めば、あらゆる束縛からも逃れる良薬だよ。」
- 李儒「良薬ですか。いや、しかし、王は、まだ18でございます。そこまでしなくてもいいのでは」
- 董卓「旗印とされると厄介なんだよ。お前に残されてる道は2つ。王に薬を飲ませるか。一族皆殺しにされ、貴様自身は、ここで呂布と武道大会をするのかな」
数刻後
- 李儒「この薬を服せば、あらゆる災いを退けます」
- 弘農王「我に病はない。これは我を殺そうとする薬であろう」
- 李儒「董太師からの賜り物でございます。お飲みなさい」
- 弘農王「李儒よ。おまえはどちらの味方なのだ。」
- 李儒「私は〜」
司会「仕方がなかった?。弘農王って、まだ18歳ですよね。何も殺さなくても」
李儒「鴆毒とは知らなかったんだ」
司会「本当ですか。実は知っていたじゃないですか」
李儒「(顔面蒼白となりながら)今日は、もう勘弁して下さい」
フラフラとなりながら部屋を出ていく。
回想
- 弘農王「我は何で、ここまで苦しい人生なのだ、天子の位を捨てて王の身分に退いたのに。逆臣に迫られて、命を奪われるとは。我は、この世をさって幽玄の世に行く。唐姫(弘農王の妃)よ。そちは王者の妃。また他者との妻とはなるな。自愛せよ。これより我はこの世を辞さん。李儒よ。董卓に伝えよ。これで満足であろうと。そして、そなたは〜。」
- 弘農王、遂に薬を飲んで死す
李儒は、自分に向けられた弘農王の目が忘れられなかった。一生、寝ていたも起きていたも、あの目。
自分は董卓に命じられただけだと、自らに言い聞かしても、自分に向けられた目。恨みとも違う哀しみとも違う。あの目。李儒は一生忘れられなかった。
王は、最後に、自分に対して、何を言いたかったのか。それは一生分からなかった。